ア段補完でいいのか
ア段補完においては、ア段文字→ア行文字の出力時には、
段キー→【ア】キー→行キーと変則的な打鍵となり、
習得の妨げになるし、ミスタイプの原因となるので望ましくない副作用であるといえます。
では、ア段補完ではなくイ段補完、ウ段補完、エ段補完あるいはオ段補完を導入した場合に、変則的な打鍵は減少させることになるのか検証を行います。
| ア段補完 | イ段補完 | ウ段補完 | エ段補完 | オ段補完 |
省打鍵が 起こる綴り | ア段文字+ ア行文字以外 | イ段文字+ ア行文字以外 | ウ段文字+ ア行文字以外 | エ段文字+ ア行文字以外 | オ段文字+ ア行文字以外 |
変則打鍵が 必要な綴り | ア段文字+ ア行文字 | イ段文字+ ア行文字 | ウ段文字+ ア行文字 | エ段文字+ ア行文字 | オ段文字+ ア行文字 |
使用した資料:
Weblog 61℃-10万字サンプルにおける 2-gram 頻度。(資料1)
ローマ字入力でもなく、かな入力でもなく-100万字日本語かなn-gramデータ(資料2)
まず、通常のローマ字入力に、各段補完を導入した場合に、補完による省打鍵がどれくらいの頻度で起こるかを検証しました
表.省打鍵の出現頻度
| ア段補完 | イ段補完 | ウ段補完 | エ段補完 | オ段補完 |
資料1 | 15.9 | 13.9 | 08.6 | 07.6 | 11.6 |
資料2 | 16.0 | 09.8 | 07.8 | 07.7 | 11.2 |
(表の見方:各段補完を導入した場合に、文章100文字あたりに省打鍵が起こる回数を示している)
打鍵数の省略効果はア段補完が最も大きく、イ段補完とオ段補完がそれに次いでいます。
次に各段補完を導入した場合に、変則的な打鍵が起こる頻度を算出しました
表.変則打鍵の出現頻度
| ア段補完 | イ段補完 | ウ段補完 | エ段補完 | オ段補完 |
資料1 | 4.0 | 1.0 | 1.0 | 2.0 | 4.0 |
資料2 | 3.9 | 0.9 | 0.9 | 2.0 | 3.5 |
(表の見方:各段補完を導入した場合に、文章100文字あたりに変則的打鍵が起こる回数を示している)
変則打鍵の頻度はア段補完,オ段補完 > エ段補完 > イ段補完,ウ段補完となりました。
拡張段キーとして、【アイ】キー【オウ】キー【エイ】キーを導入すると、これらのキーを使うことで変則的な打鍵を回避できる場合があります。
拡張段キーを導入した場合に、変則打鍵が起こる頻度を算出しました。
表.拡張段キーを導入した場合の変則打鍵の出現頻度
| ア段補完 | イ段補完 | ウ段補完 | エ段補完 | オ段補完 |
資料1 | 1.3 | 1.0 | 1.0 | 0.5 | 1.6 |
資料2 | 1.3 | 0.9 | 0.9 | 0.4 | 1.8 |
この条件では、変則的な打鍵の頻度はオ段補完 > ア段補完 > イ段補完,ウ段補完 > エ段補完であるものの、
拡張段キーを考慮しない場合と比較して、その順位間の格差は小さいものとなりました。
以上の検証から、省打鍵効果と、変則打鍵の頻度のバランスを考慮すれば、ア段補完かイ段補完のいずれかが望ましいといえます。
ア段補完は省打鍵効果が大きく、変則打鍵が多い。
一方、イ段補完では、省打鍵効果が小さいが、変則打鍵はより少ないと言えます。
どちらが良いかは一概には言えませんが、
まあ、ア段補完が劣っているともいえないので、カナガワ配列で大丈夫!
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